こんなコラムです
   (本書「はじめに」全文)

 本作『売れる気配な新聞コラム』は、中日新聞に二〇〇〇年一月から二〇〇四年三月まで連載された、わたしのコラムの復刻版です。連載のきっかけは日本通信販売協会の会員誌に書いた別のコラム『やじ馬日記 極上の消費をさせてくれ』です。この「やじ馬日記(=矢嶋の日記)」のような消費者目線の話を中日新聞に書かないかとお誘いを受けたのです。そこでデモ原稿を書きました。テーマは利用者の立場から感じた、商売・ビジネスに頑張って欲しい事。無事合格したので月一回のペースで書き始めました。掲載枠はコーナーキックという金曜夕刊のコラム欄でした。
 第一回は「買い得感」というタイトルの下、スーパーが安いって本当?を取り上げました。スーパーと個人店を比べてみてください、わたしたちの値頃感って意外とイメージ先行かもしれませんよ、を問い掛けてみました。スーパーにとっては迷惑な話だったかもしれません。しかし事実は事実。お客様は気づいています。どうしますか?を読者のみなさんとシェアしてみたのです。こんな調子でスタート。幸い好評をいただき、気が付いてみれば全五〇回、四年三カ月も続けさせていただきました。新聞コラムとしては、かなり長い連載ではないでしょうか。
 そのコラムを今回復刻しました。理由は「今でも」。たとえば、さきほど触れた第一回の内容。二〇年前に書いた話ですが、事態はあのときより悪化している気がします。「スーパー、安い」は完全に崩壊。個人店やミニスーパーの方がお手頃に。一方でチェーン店しか利用しない人が増え、よい物を安く売る努力(とくに個人店の)が見過ごされています。この不思議。意識できれば、新しい機運が高まりそう。そんな売れそうな気配、各回に詰まっているし、応用できるし、この原稿、リサイクルしなきゃ。そう考えたのです。
 そこで全五十話の中から、「今でも」価値のありそうな二十六話を選り抜いて、補修再録しました。しかし昔のコピペでは「今でも」は伝わりません。そこで前説的な短文を各回原稿の前に付け、それを目次にしています。第一回の目次は
「スーパーは何でも安い」って本当? イメージだったりして
に。新聞っぽい元のタイトル「買い得感」より内容が伝わると思います。
 原稿は掲載順に並べています。締めは、やはり最終回を。
 何のために買う? 人生を楽しみたいから。最後は根本のお話です。
をお送りします。

注)原文は縦書き(文庫本サイズ)です。
  そのままを横書きにしたため漢数字等
  違和感があります。ご了承ください。

今読む価値を「あとがき」から
        (全文をどうぞ)

 このコラムが掲載された二〇〇〇年一月~〇四年三月は今とずいぶん違います。インターネット利用は発展途上でした。ヤフーやグーグルによる検索自体が話題に。amazon.jpが開業(二〇〇〇年)。PCとPHSと携帯電話の時代。連載が終わる半年前にiTunes Store が開業(〇三年八月)。ユーチュバーはいません(YouTubeは〇五年から)。スマートフォンもなく(iPhoneG3日本発売は〇八年)、ツイッターもフェイスブックもありません(ともに〇八年に日本語版)。しかし、テレビや新聞などマス・メディアが情報発信力を失っていく。そんな予感が濃厚な時代でした。
 既存の小売業が苦悩した時代でもありました。二〇〇〇年に衣料品スーパーの長崎屋が経営破綻。西武百貨店を中核とするセゾングループは経営不振で二〇〇一年に崩壊。二〇〇二年にはセゾングループのスーパー西友がアメリカのウォルマートに買収されます。二〇〇四年、今度は日本一のスーパー、ダイエーが自主再建を断念。事実上、倒産します(後にイオンの傘下へ)。
 不要は不人気になり、期待に人気が集まる。これは世の中の常ですが、その変化がもっとも激しかった時期だったように記憶しています。
 その渦中にいるお客様は何に期待しているのだろう? その具体を暮らし目線で探り当てようと書いたのが、このコラムです。ずっと続けている観察調査(詳しくは拙著『観察調査のすすめ』で)から着想を得て書き続けました。ですからすべて実体験。勝手に観察だったので、原則として場所や企業名は出しませんでした。
 しかし「新幹線、六時の始発。しかしホームの売店は…。開業時間、遅(怒)」では東京駅と実名を。この回にはある期待が込められていました。中日新聞は中部地方の有力紙。ですからJR東海の本社(名古屋市にあります)の誰かが読む可能性が高いのです。新幹線を運営する彼らは新幹線ホームも運営しています。もちろん東京駅のホームも。もし目に留まり問題に気づいてくださったら…。掲載後、売店の開店時間は早まりました。作戦、成功?
 掲載後を考えると、「写真集のような旅館ガイド。いいけど、もっとコンパクトに。」も感慨深い回になりました。当時の旅行ガイドは悲惨でした。ウェブサイトに名所旧跡、宿泊施設、飲食店、時刻表の情報が次々とアップされていく中、書店には旧態依然とした旅行ガイドがずらりと並んでいました。で、これが欲しいを原稿に。そして二〇〇八年、ことりっぷが創刊されます。見た瞬間、「そう、これこれ!」と嬉しくなったことを記憶しています。書いてよかったなぁ。偶然ですけど。
 メッセージが届かなかった。そう想う回もあります。「『ここの品なら大丈夫』 そう思わせてくれる■が必要」は百貨店を応援する気持ちで書きました。品質のわかる客と品質で裏切らない百貨店。この関係を「百貨店だから」「他にない有名ブランドが百貨店にはあるから」と慢心し破壊していく。当時の百貨店はどこもそんな状態でした。「あぁ、それじゃだめ」と思って書いたのですが。今になって思うと気づいたのは彼らではなく、IKEAやフライングタイガー、ナチュラルキッチンだったように感じています。
 書いたこと、今でも未だ。そう感じる回もあります。「種類が多く、値段が全然違う。たとえば包丁。しっかり選びたいけど。」と「日本茶の茶葉、同時に三種。茶筒も三つ要るわけで。需要、広がります。」は、とくに。包丁のピン(極上)とキリ(粗悪)をわたしたちに説明してくれる人はどこにいるのでしょう。大阪府の堺市や新潟県三条市・燕市などに知識は隠れていそうですが、わたしたちがそれを知る手段は無いに等しい。日本茶の売り方も相変わらずです。よかった時代を懐かしむ風が強すぎるように感じます。烏龍茶のような飲み食べ合わせ提案も、紅茶のようなパーティー的楽しみ(例 アフタヌーンティー)提案もありません。包丁も日本茶も伸びる可能性を秘めているのに…。
 時を経ても、売れる?売れない?の分かれ目は案外変わらないのかもしれません。そんな何かに毎回のように触れてきたこのコラムはこれから何かの役に立つのかもしれません。
 お仕事ご商売に励んでいらっしゃる皆さま、マーケティングという発想に関心をお寄せになる皆さまに、明日のヒントをお届けできたら。今、そう思いながら窓の外を眺めています。

さて、目次は?

そちらは書店サイトの作品紹介欄に
掲載させていただいております。

 アマゾンのキンドルは 

 アップルブックスは  

     
矢嶋剛・著の電子書籍 marketing 1coin series(9)『売れる気配な新聞コラム』(矢嶋ストーリー発行)の表紙です。本のタイトルの下に、ブックスタンドのイラストが描かれています。本の中身が新聞コラムの復刻版なので、新聞を売るヨーロッパの売店をイメージして描きました。スタンドの店員さんはピンクでぬっぺいりとしたカワイイ妖怪風。このイラストの下に著者名。矢嶋剛と書いてあります。彼はこのイラストの作者でもあります。
   

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